【】【アストンマーティン・ホンダの現在地(3)】責任転嫁をやめて一定の成果も、鈴鹿で浮き彫りになったシャシー側の遅さ
4月4日
海外有識者が現地からお届けする、アストンマーティン・ホンダのF1活動を観察し、分析する連載コラム。
2026年、アストンマーティンF1チームとホンダはワークスパートナーシップの下で参戦、新たな時代へと踏み出した。ホンダはパワーユニット(PU)マニュファクチャラーとしての活動を再開、チームは天才デザイナー、エイドリアン・ニューウェイの獲得にも成功し、F1での成功を目指す上で強力な基礎を築いた形だ。しかし、今年一新された技術規則の下で、今のところアストンマーティン・ホンダは厳しい状況に陥っている。
かつてF1チームでテクニカルディレクターの役割を担い、現在は解説者を務めるアンドリュー・ギャリソン氏が、アストンマーティン・ホンダの状況と動向を分析する。
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■口を閉じて仕事に集中したのは正しい判断
F1日本GPの週末、アストンマーティンがエイドリアン・ニューウェイを本拠に残したこと、ドライバーや経営陣がチームの苦境の原因について発していた非常に有害なコメントのトーンを弱めたことは、常識的な判断として評価したい。なにしろ、日本GPはホンダにとってホームグランプリであり、開催地はその偉大な日本メーカーの傘下の鈴鹿サーキットなのだから。
地元メディアやファンは、アストンマーティン自身もまた苦境の責任の一端を担っていることを十分承知していると思う。ホンダはパワーユニット計画において途中で重大な変更を強いられたのに対し、ライバルマニュファクチャラーは2022年初頭から一貫した方向性で開発を続けてきたのだ。
したがって、鈴鹿では批判や責任転嫁は歓迎されるはずはなく、それを理解していたアストンマーティンは、メディア対応に、より落ち着いた、分別ある姿勢で臨んでいた。

アストンマーティンのチーム全体が、パワーユニットのパフォーマンスを最大限に引き出すことに集中し、シーズン最初の2戦を終えてなお未知の部分が多かったシャシーの実力を理解しようとしていた。アストンマーティン・ホンダの鈴鹿でのパフォーマンスは決して優れてはいなかったが、少なくとも大きなトラブルなくレースを完走した。従って、口を閉じて仕事に集中するという方針は、それなりの効果をもたらしたと言っていいだろう。
■PUだけでなくシャシーのパフォーマンス不足も深刻

もちろん、フェルナンド・アロンソほどのドライバーがウイナーから1周遅れでフィニッシュしたとなれば、彼のマシンがいかに遅いかは明白だ。アロンソのベストラップは、メルセデスのアンドレア・キミ・アントネッリが記録したファステストラップよりも3.789秒も遅く、さらに懸念すべきことに、グリッド全体で最もダウンフォースが少ないキャデラックに乗るセルジオ・ペレスのベストタイムより0.584秒遅かった。
AMR26がストレートで著しく遅いことは明らかだ。予選Q1で最速のシャルル・ルクレール(フェラーリ)に対して2.731秒遅れたアロンソは、スピードトラップで最速マシンに対して8.9km/h、スタート/フィニッシュラインで9.8km/h、セクター1終盤で14km/h、セクター2終盤で8.8km/h、遅れを取っていた。
これらは確かに大きな差ではあるが、私の計算ではQ1でのタイム差を完全には説明できない。アロンソはコーナーでもそれほど速くなかったと考えられる。

このことから私が導き出す結論は、ホンダが大きく遅れを取り戻す必要がある一方で、ニューウェイとそのチームもシャシーからさらなる速さを引き出さなければならないということだ。AMR26は、パワーユニット側の要求に合わせた妥協なしに、シャシー側チームの意のままに設計され、サイドポッドの形状やサスペンションアームが空力パッケージの重要な一部を担う構造など、非常に興味深い特徴を備えている。
他のチームは、購入したパワーユニットに合わせてマシンを設計するか、フェラーリ、メルセデス、レッドブル、アウディといったワークスチームであれば、シャシーとエンジンの間で何らかの妥協を図っている。そうではないAMR26は、コーナーで圧倒的な速さを発揮していてしかるべきだと私は思っていた。しかし、データが示す現実はそうではない。
■数カ月のうちに予想されるトップの変更
次戦マイアミまで5週間のインターバルができた今、シルバーストンでもHRC Sakuraでも、多くの課題に取り組む必要がある。最高戦略責任者のアンディ・コーウェルは、昨年11月末に辞意を表明し、アストンマーティンを去る日が近づいていると思われる。アストンマーティンとホンダは、彼の持つパワーユニット統合に関する卓越した知識を、離脱前に最大限活用すべきだろう。
一方、ジョナサン・ウィートリーの加入まで、ローレンス・ストロールはあと数カ月は待たされることになるかもしれない。もちろんウィートリーがニューウェイに対して影響力を持つことはない。しかし、少なくともレースチームの正しい運営術を心得ており、さらに、24年前のルノーのテストドライバー時代からアロンソを知っている人物だ。ウィートリーは貴重な戦力になるだろうし、アウディに失望させられた後だけに、非常に高いモチベーションを持っていることだろう。それについては、また別の機会に話せればと思う。

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筆者アンドリュー・ギャリソンについて
パドックでアンドリュー・ギャリソン(仮名)の姿を見逃すことはまずない。身長1メートル90センチ、体重120キロという巨躯を持つアイルランド出身のギャリソンは、モータースポーツ界で広く愛されるベテランであり、あらゆる仕事を経験し、あらゆる人物と仕事をしてきた。彼は、物事を分析するやり方に、きわめて独特なスタイルを持っている。ギャリソンにとって、物事は「正しい」か「間違っている」かのどちらかであり、その中間は存在しない。
彼はレーシングカーについてあらゆることを語ることができる。なぜなら、実際にそれに関連するすべてを経験してきたからだ。10代のころからレーシングメカニックとして働き始めたギャリソンは、20歳になる前に見習いメカニックとしてF1の世界に足を踏み入れた。しかし、そのわずか2カ月後には、下位カテゴリーのレースでチーフメカニックを任され、チームトラックのドライバーも兼ねながら、地元のスーパーマーケットでサンドイッチを買い出しする係まで担当するようになった。
やがて彼はチームのナンバーワン・メカニックに就任、実践的なアイデアが次々と採用されたことでデザインチームにも加わった。これが契機となり、やがて彼は、自身でシャシーを設計して出場する下位フォーミュラで活動するようになる。
約10年間、自らのチームを運営し、他チームのエンジニアリングを手伝い、トップデザイナーたちの失敗も間近で見てきた後、ギャリソンはテクニカルディレクターとしてF1へ復帰。引退の時を迎えるまで、その職を務め続けた。
声が大きく、歯に衣着せぬ物言いのギャリソンは、今もかつての部下たちに静かな畏怖の念を抱かせる存在だ。彼らの中には、いまやテクニカルディレクターやチーム代表になっている者もいるが、誰もが今もなお、ギャリソンに一目置いている。
本人は新しいテクノロジーには少々ついていけなくなったと率直に認めているが、基礎に関する知識は深いため、今は、技術面だけでなく人間関係の問題についても語れる解説者として、高く評価されている。
(Andrew Garrisson)

